読書について 他二篇 (岩波文庫)

読書について 他二篇 (岩波文庫)

○読書は、他人にものを考えてもらうことである。
本を読む我々は、他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎない。
(P127)


○だが読書にいそしむかぎり、実は我々の頭は他人の思想の運動場
にすぎない。そのため、時にはぼんやりと時間をつぶすことがあっても、
ほとんどまる一日を多読に費やす勤勉な人間は、しだいに自分でものを
考える力を失って行く。(P128)


○食物は食べることによってではなく、消化によって我々を養うのである。
それとは逆に、絶えず読むだけで、読んだことを後でさらに考えてみなければ、
精神の中に根をおろすこともなく、多くは失われてしまう。しかし一般に
精神的食物も、普通の食物と変わりなく、摂取した量の五十分の一も栄養と
なればせいぜいで、残りは蒸発作用、呼吸作用その他によって消えうせる。
(P129)


■おそらく、『私の読書法』(岩波新書)で読書を食事にたとえる文章が
あるのは、ショウペンハウエルの影響であろうと思われる。

■読書によって、盲目的に考えることをやめてしまうことへの警鐘は
現代ビジネスマンに通じるものかもしれない。