■狐狸庵先生の経験的読書術

○Aという作家なら作家の作品を全集でまず読む…Aの小説は
もちろんのこと、その日記、書簡まで全て読む。(P14)

○これがすめば、Aが影響を受けた作家に手を広げるのである。
大体、1人の作家は自分だけの力、自分だけの個性で文学的開眼
をしてはいない。彼は必ず同世代や先輩の作品に影響を受けて
いるか、外国の文学、あるいは古典の中に、愛読書というものを
持っているはずである。(P15)

■これは内的動機を持った後の作業であろう。全く読書に興味を
持っていない人がこれはできないから。

【 結 論 】

1:自分で何か問題をもって本を読むと頭によく入る。
2:1人の著作家のものを全部読むこと。それからその人の影響を
受けた本に手を拡げる。
3:読書の姿勢や時間にはやはり各人うまいやり方があるから、
それを発見すること。

■パラレル・リーディングは誰もがやっていることなのだな…。

○ロンドンに行けば、グレアム・グリーンの『情事の終り』の
小説をまた読みなおし、そこに出てくる通りや教会や公園を地図
で探して翌日、暇をみてそこを歩く。ロンドン塔や大英博物館
出かけるよりも、その訪問のほうがはるかに私の好奇心を満足
させたし、またグレアム・グリーンの小説技術の一部を知る上で
勉強になった。(P52)