古代から来た未来人 折口信夫 (ちくまプリマー新書)

古代から来た未来人 折口信夫 (ちくまプリマー新書)

■ここ最近の中沢新一の新書は読みやすく、エッセンスがギュッと
詰まっていていい。

折口信夫は人間の思考能力を、「別化性能」と「類化性能」のふたつに
分けて考えている。ものごとの違いを見抜く能力が「別化性能」であり、
一見するとまるで違っているように見えるもののあいだに類似性や共通性を
発見する
のが「類化性能」であり、折口自身は自分は「類化性能」がとても
発達していると語っていた。(P18)

■折口の思考方法としての「類化性能」。

■タマとカミの区別。タマ=霊。

■タマ=「類化性能」的。カミ=「別化性能」的。

○この「精霊」は、「古代人」の思考法である「類化性能」と相性がとてもいい。
体系のなかでの名前や場所を持っている「神」は、宗教的なものごとに「別化性能」
が働くときに生まれてくる考え方である。ところが、流動する液体のような「精霊」
には、合理的な思考を生む「別化性能」はうまく働かない。別のものとくっついて
新しい存在をつくりだしたり、ものごとの協会に潜り込んでいける「精霊」をとら
えるには、芸術をも生みだすことのできた「類化性能」しか、有効には機能しない
からである。(P22)

■折口と柳田における神の視点の違い

折口=共同体の「外」からやってきて、共同体になにか強烈に異質な体験を
もたらす精霊の活動(P32)

柳田=共同体の同質性や一体感を支えるものこそが神(P32)

○芸能者は、このように死と生命とに直に触れながら、ふたつの領域を行ったり
着たりできる存在なのである。(P66)

○別の言い方をすれば、芸能者自身が死霊であり、荒々しい生命でもあるという
矛盾をしょいこんでいる。だから、彼らはふつうの人たちとは違う、聖なる徴を
負っている人々として、共同体の「外」からやってくる、「まれびと」としての
性質を持つことになったのだ。(P66)