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【読書入門3篇】 :これを読めば、読書嫌いが読書好きになること間違いなし!


知性の磨きかた (PHP新書)

知性の磨きかた (PHP新書)


林望『知性の磨きかた』(PHP新書)第二日 読書の幸福(P100〜P173)


まず、真っ先に読書入門として読んでいただきたいのは、林望さんの『知性の磨きかた』(PHP新書)にある「読書の幸福」というパートです。ここでわたしが最も共鳴したのは、読書における「内的動機」に関する発言です。
私は、内的動機のないところに、課題図書だの読書感想文だのというような制度的な形で、やみくもに本を与えるということは、そういう危険をはらんでいるということを警告したいんです。無理に与えなければね、そういうつならなかったなとかいうような先入主をもたせる機会もあり得ないわけだから、何か内的な動機が湧き上がってきたときにね、自分が求める本を自分で本棚から掴み出す。そのときを待つべきなんです。(P114)
そもそも、わたし自身がそうだったからよくわかるのですが、読書が苦手という人には読書を強要せず、自分が読みたいという内発的理由が湧き立つ時を待つべきで、それが早咲きの人もいれば、遅咲きの人もいるはずなんですね。わたしなんて大学入学時期だったのですから、かなり遅いほうでしょう。
「本を読んだからといって優れた人間になるなどというのは、しょせん根拠のない幻想だ」と言い切る林さんの痛快だけれども、必ず弱者を優しく守ってくれる、本書をわたしは第一の読書入門としてあげたいと思います。


思考のレッスン (文春文庫)

思考のレッスン (文春文庫)


丸谷才一『思考のレッスン』(文春文庫) 
レッスン3 思考の準備〜レッスン4 本を読むコツ(P101〜P178)
二冊目にお薦めしたいのは、作家の丸谷才一さんの『思考のレッスン』です。この本はタイトルに読書の文字はありませんが、レッスン3から4にかけては、「書評を読め」、「ひいきの書評家をつくれ」、「ホームグランドを持て」、「人物表、年表を作ろう」・・・等、示唆に富んだ読書術が満載です。しかも、インタビュー形式でわかりやすいので、多少学術的な話があっても、難しさをあまり感じません。この本の中で最も好きな文章は以下のくだりです。
しかし、一番大事なことがもう一つある。それは、まとまった時間があったら本を読むなということです。本は原則として忙しいときに読むべきものです。まとまった時間があったらものを考えよう。(P137〜P138)


使える読書 (朝日新書)

使える読書 (朝日新書)


齋藤孝 『使える読書』 (朝日新書) 取扱説明書(P9〜P31)
読書入門書の最後に紹介したいのは、明治大学の教授、齋藤孝さんの『使える読書』。本書のはじめに描かれている「取扱説明書」はとてもわかりやすく、齋藤読書術のエッセンスがギュッと凝縮されています。もちろん、一躍有名になったあの「三色ボールペン」読書術も描かれています。本書のメッセージで私が激しく賛同したのは、齋藤さんが「読書はアウトプットのために読め」といっていることです。
本は読むものとして存在する。これがふつうの考えだけれど、僕はそうは思わないんです。
それを読んで「書く」ためにある、「話す」ためにある (P13)
この発想は一見「そりゃあ、学者はそうだろうよ!」と流されてしまうものかもしれません。しかし、これは常にアウトプットで勝負するビジネスマンに必要な読書マインドの前提条件なんですね。ただ、残念なのは、有益な技術論は取扱説明書の部分のみで終わってしまうこと。以降はいわゆる鑑賞論となっているので、面白そうな本があればご一読を!


【古典読書論3篇】:読書好きはみんな読んでいる古典読書論


本を読む本 (講談社学術文庫)

本を読む本 (講談社学術文庫)


M.J.アドラー、C.V.ドーレン 著 / 外山滋比古、槇未知子 訳
『本を読む本』(講談社学術文庫
さて、読書論の古典でわたしが真っ先にあげたいのはアメリカの読書の教科書『本を読む本』です。最近では経済評論家の勝間和代さんに紹介されたことがきっかけで一気にブレイクし、ビジネスパーソンを中心に人気が広がっているようです。『本を読む本』では小学校で学習する「初級読書」から高度な「シントピカル読書」まで4つの読書レベルが提示され、そのレベルごとに細かく読書技術が説明されていきます。わたし自身がこの本で最も共感したのは、知識のための知識ではなく、知識が解決を助けるような応用にこそ重点を置いている点です。
知識を実用するためには、知識を行為の規則に作り変えなければならない。「実態を知ること」から「どうしたら目的に達することができるかを知ること」に移行しなくてはならない。つまり、事実を知ることと、方法を知ることの二つになる。理論の本は事実を教え、実践の本は方法を教える。この本は理論的ではなくて、実践的である。(P76)
わたしはこの箇所から、読書の知識は、実践を通じて自分のルールに変換し、蓄積しなければならないのだ、と教えていただきました。


読書について 他二篇 (岩波文庫)

読書について 他二篇 (岩波文庫)


ショウペンハウエル 著/斉藤忍随 訳 『読書について』 (岩波文庫) (P127〜P147)
次にあげたいのは、ドイツの哲学者ショウペンハウエルの読書論です。わたしが本書で感銘を受けたのは、「読書に頼りすぎて考えることをやめるな!」というシンプルですが、大変深いメッセージです。
読書にいそしむかぎり、実は我々の頭は他人の思想の運動場にすぎない。そのため、時にはぼんやりと時間をつぶすことがあっても、ほとんどまる一日を多読に費やす勤勉な人間は、しだいに自分でものを考える力を失って行く。(P128)
この「自分でものを考える力」を読書が無意識に奪っているかもしれない。そんな警告を我々に提示してくれる珍しい読書論だと言えます。



立花隆『ぼくはこんな本を読んできた‐立花式読書論、読書術、書斎論』(文春文庫)
最後は知の巨人、立花隆さんの読書論です。とにかく、この人の読書量たるは半端ではありません。本書には、中学校3年生のときの作文『僕の読書を顧みる』も掲載されていますが、既に小学生の頃から読む量が格段に違うのです。「恐れ入りました!」というしかありません。さて、本書のなかでお薦めなのが、“「実戦」に役立つ十四か条”です。箇条書きで、わかりやすく、ここだけをコピーして手帳に貼っておき、時間があるときに眼を通すだけでも効果があるように思います。なかでも14ヶ条目の次のくだりはドキッとします。
大学で得た知識など、いかほどのものでもない。社会人になってから獲得し、蓄積していく知識の量と質、特に20代、30代のそれが、その人のその後の人生にとって決定的に重要である。若いときは、何を差し置いても本を読む時間をつくれ。(P85)
先輩からよく「20代の経験が30代の仕事を規定する。また、30代の経験が40代の仕事を規定するものだ」と言われてきたのですが、どうやら読書も同じようですね。その年代ごとの読書が後々の人生に響いてくるのだな、と思った深い言葉でした。



【ビジネス読書論3篇】:ビジネスマンにとっておきの読書論はコレだ!


レバレッジ・リーディング

レバレッジ・リーディング


本田直之レバレッジ・リーディング』 (東洋経済新報社
ここからはビジネスに効く読書論を3冊紹介します。まずはじめは、読書を「投資」と位置づけ、ビジネスマンに多読を説いた、本田直之さんの『レバレッジ・リーディング』です。レバレッジとは、てこの原理のことで、最小限の力で最大限の効果を発揮すること。その意味は根底ではハックとつながっているのでは・・・と思うほどです。さて、本田さんの著書でわたしが最も共感したのが「レバレッジメモ」の作り方の部分。わたし自身も経験から忘れてはならない「教訓」をノートにまとめていたので、やっていることがとても似ており、親近感を覚えました。
良書との出逢いが数回限りの特別な体験で終わらせないようにするには、条件反射的に現実のビジネスで生かせるように、読書をシステム化することです。(P142)
読書を読書のままでは終わらせない。読書後のフォローをビジネスのためのシステムまで昇華させることを説いている点に、ビジネス読書論の草分け的意義を見出すことができます。


あなたもいままでの10倍速く本が読める

あなたもいままでの10倍速く本が読める


ポール・R・シーリィ著/神田昌典監訳
『あなたもいままでの10倍速く本が読める』(フォレスト出版
二冊目に紹介するのは、神経言語プログラミングおよび加速学習分野における世界的権威、ポール・R・シーリィが描いた速読術の本、『あなたもいままでの10倍速く本が読める』です。わたしはそれまで速読術の本を読んだことがなかったのですが、自分の読書経験がまるで一つの理論としてまとまっているような感覚を覚えた本でした。速読の本質は、本文のなかで言及しましたが、高速で何回も読んでキーワードを見つけ、そこを重点的に読むことです。しかし、本書で改めて大切だなぁと思ったのは、本を読む目的を自覚することの大切さでした。
どんな読書にしろ、最終的には何らかの役に立つでしょう。しかし、目的をはっきり設定すると、それを達成する確率は格段に上がります。目的を持つことで、あなたの能力を最大限に使うことができるようになるのです。強い目的意識があれば、たいていのことは達成できます。目的こそ、フォトリーディング・ホール・マインド・システムを動かすエンジンなのです。(P63)
何のために「いまここにある」本を読むのか?その目的を自覚することが、時間の無駄を省き、最速のリーディングにつなげることができる。このシンプルなコツを改めて自覚したのです。


差がつく読書 (角川oneテーマ21)

差がつく読書 (角川oneテーマ21)


樋口裕一 『差がつく読書』(角川oneテーマ21)第一部「実読」の方法(P11〜P110)
最後に樋口裕一さんの『差がつく読書』です。本書は読書を「実読」と「楽読」に分けて、その方法の違いをわかりやすく説明してくれます。「実読」とは、何か行動に結びつけるために行う読書のことをいい、「楽読」とは、ただ楽しみのためだけに読む読書を指します。わたしがこの「実読」に注目したのは、「実読」こそ「ビジネス読書」であると言い換えられるからで、アウトプット型の読書といえるものだからなのですね。樋口さんは次のように言っています。
「実読」の場合、知ったことを何らかの形で示すことが必要になる。言い換えれば、何かを知りたくて、何かの役に立てたくて本を読むということは、その本を読んだ後、何らかの意味で発信し、他者にその本の意義を示したり、その本から得た知識を他者に披露したり、その情報を実行に移したりすることを伴うということだ。(P17)


【超アウトプット生産のための読書論3篇】:アウトプットを生み出すヒントをくれる読書論


知的生産の技術 (岩波新書)

知的生産の技術 (岩波新書)


梅棹忠夫『知的生産の技術』(岩波新書)第6章:読書(P97〜P118)
今からほぼ40年前、1969年に出版された本ですが、いまだにその内容は色あせていません。昔に比べ、ツールは変わりましたが、ルールはさほど変わらないのだな、と実感します。読むたびに示唆を与えてくれる名著です。本書の読書のパートで「よむこととたべること」の類似性が説明されているのですが、ここが抜群に面白いので紹介しましょう。
読書と食事とのアナロジーは、もう少しべつな面でも成立するようだ。食事には栄養ないしは健康という面と、味覚のたのしみという面とがあるように、読書にも、精神の糧という面と、心のたのしみとしての読書という面があるのではないか。栄養学と食味評論とがはっきりちがうように、読書論においても、技術論と鑑賞論とは、いちおう別のこととかんがえたほうがいいということなのである。(P98-P99)
ここを読んでハッとしたことがあります。それは、わたしがつまらないと感じる読書論は、技術論と鑑賞論の区別がなされていないまま、ごちゃごちゃに書かれているということだったのです。リーディング・ハックは実践本であり、技術論であることに徹底したい。そう思わせてくれた気づきの文章でした。


知的生活の方法 (講談社現代新書)

知的生活の方法 (講談社現代新書)


渡部昇一 『知的生活の方法』 (講談社現代新書
二冊目。これまた大ベストセラーの『知的生活の方法』です。本書は技術だけでなく、知的生活のスタイルも提示している点で、関心も幅広く、読んでいてとても楽しい1冊です。特に、住まいに関して、本と共に暮らす生活の素晴らしさが、自らの体験を交えて描かれています。また、自宅に図書館を持つことの意義を大宅壮一さんの事例をあげ、次のように言っています。
みんなが小さい書斎で、こちょこちょやっていた時代に、私有図書館を作り上げた大宅氏は、やはりジャーナリズムの圧倒的な雄であった。戦前の言論界の雄であった徳富蘇峯も、稀有の蔵書家であったことと好一対である。そしておもしろいことには、その蔵書の種類の差が言論の質の差になっているわけである。(P124)
わたしが自宅に図書室を作ろうと決心したのは、この一文に触発されたからです。


電縁交響主義―ネットワークコミュニティの出現

電縁交響主義―ネットワークコミュニティの出現


NIFTYネットワークコミュニティ研究会 『電縁交響主義』(NTT出版
松岡正剛「電縁社会におけるロラン・バルドの末裔はハイパーリンクが好きなラディカル・エディターになれるのか」
最後にご紹介するのは、未来の読書方法の啓示です。これは1997年に、松岡正剛さんが電子読書の「新しいリテラシー」について触れたエッセイなのですが、最近、読み返してみて、わたしがリーディング・ハックで行おうとしていたのは、ここで描かれているリテラシーに近いのではないか、と思いました。
これらのうちの必要なコンテンツを自分にあったフレーム(自己編集のためのフォーマット)で選びとり、これを自分のミニデータベースにストックするか、ないしはプリントサービスで「引き取る」ということをする。しかし、この行為はすでにオーサリングに近く、いわゆる読書とはいいにくい。こうして作業がくりかえされていく。こうした一連の行為には、かつての「読書」はない。探して、覗いて、並べて、較べて、取ってくる。そして、これを「読む」ときはすでに編集に入っている。(P356)
そう。インターネットが普及し、「読む」という作業は、もはやかつての姿ではなくなりつつあります。だから、僕らは今まで培ってきた先人の読書の技術や方法を理解しつつ最新の技術にフィットさせ、同時に何かを生み出す準備をしておくべきなんです。いまこそ新しい読むスタイルを確立すべきです。そして、未来型読書の実験をみんなで試行錯誤し、日本全国で学生たちやビジネスマンの間で、新しく生まれた読書技術が共有される時、日本は世界に冠たる「アイデア立国」として変貌をとげるのかもしれません。